PHOTO WALK コース紹介#3 「継続する昭和」上板橋コース

「ND2 studio」では、スタジオがある東京・板橋区中台を拠点にフォトウォークを開催しています。ND2のプロカメラマンが、起伏に富んだ独特の地形に広がるストリート・スナップのポイントをご案内します。

内村コースケ:ND2 Photographer


「中台コース」「上板橋コース」「西台コース」の3コースを設定しています。この「上板橋コース」は、最寄り駅の上板橋駅に向かい、途中の庶民的な住宅地や駅前商店街を巡る全行程1時間30分〜2時間のコースです。



昭和生まれのストリート・スナッパーは、どうしても古き良き「昭和の風情」を求めてしまう。後ろばかり見ている「ノスタル爺」ほど寂しい存在はない。しかし、スナップ・フォトでシャッターを切る動機となる「風情」は、眼前の光景に刺激を受けて開いた写真家の「記憶の引き出し」と連動している場合が多い。小さな感動で幸せを感じられる人ほど、そして、その幸せの記憶の数とバリエーションが多い人ほど、スナップシューティング向きの写真家だと僕は思う。


つまり、ストリート・スナップは、必然的に「追憶のフォトウォーク」となり、昭和の思い出を豊富に持つ中高年が町に昭和の残滓を探してしまうのは、ごく自然な成り行きなのである。そして、私鉄の駅前商店街とそこに至る住宅地を通るこの「上板橋コース」には、私たち「ノスタル爺」のアンテナに響いてくる「生きた昭和」が点在し、町全体の空気感を形成している。





実は、僕はND2 studioがある板橋区とは、これまでほとんど縁がなかった。幼少時は目黒区・品川区で育ち、高校生以降で縁が深いのは葛飾区・台東区・江東区だ。20代で地方に出て、30代で平成の東京に帰って来た時には、一人暮らしの身軽さで再び下町に自ら好んで住んだ。幼少時の東京で体験したリアルな「昭和」がまだ残っている町を本能的に求めたのかもしれない。だが、こと「昭和感」で言えば、令和の下町は既に一周回ってしまっている。今の下町の昭和は、残滓というか遺跡というか、リアルの生活の中では消えかけていて、形骸的な過去のイメージに落ちてしまっているように思うのだ。


一方、ND2周辺の志村・上板橋地区の印象は「昭和が継続する町」である。下町では一周回って、自分が生きた昭和40〜60年代の生活が断絶しているように感じられるのに対し、ここではその時代の人々の暮らしがまだ継続しているように見えるのだ。人口統計データなどには依らない、いちストリート・スナッパーとしての感性(妄想)にすぎないのだが、ともかく中台や上板橋を歩いていると、僕の昭和の記憶の引き出しがバカスカ開いていく。





とはいえ、昭和に思い入れがない人には、そのあたりはどうでもいいわけで、正直、昭和の思い出の引き出しを大量に持っている僕には、若い人たちがこの「上板橋コース」にどんな風情を感じるのか分からない。世代に関係なく通じる映画や漫画で描かれるような美化されたノスタルジーを感じるには、多分、ここの生活感はリアルすぎるのではないか。だから、たとえば浅草観光のようなつもりで歩くコースではないと僕は思う。だからこそ、ぜひ若い人たちにも撮り歩いてもらって、全く違う捉え方の写真を見てみたい。








コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です